音楽を題材にした漫画はブルージャイアント等色々ありますが、純粋に音楽ではなく人の物語として感動した漫画が一色まこと先生の「ピアノの森」です。
この漫画の全てを伝えたい所なんですが、おそらく実際に読まないとこの感動は味わえません。
漫画「ピアノの森」は大まかに3章に分かれています
物語は「第何章」のように明確には区別されていませんが、【小学校編】【思春期編】【世界編】に分かれています。
もう最初の小学校編からノックアウトされてしまったわけなんですが、連載当時「ピアノの森」を毎回読んでいました。なんとなく自分自身が成長するにしたがって、週刊漫画誌を買わなくなって読まなくなってしまったんですが、こんな素敵な漫画を読み続けなかった自分を叱りたい気分になりました。
今回は小学生編を少し語ってみたいと思います。
周辺の土地に住む人々から忌み嫌われている色街である森の端(もりのはた)に住む、娼婦の息子の主人公「一之瀬 海(イチノセ・カイ)」という少年の成長記録の物語なのですが、設定が結構特殊です。
森の近くの色街に住んでいる主人公なのですが、森にはオバケピアノと呼ばれる「音の出ないピアノ」が捨てられています。が、実はそのピアノはカイだけが弾ける特別なピアノ。カイはひょんな事からそのピアノに3歳の時に出逢い、ずっと夜になるとそのピアノを弾いて育ちました。
ある時東京から引っ越してきた有名ピアニストの息子、雨宮(あめみや)はイジメッ子から「男を見せろ。森でオバケピアノを弾いて来い。」と迫られます。
その話を聞いていたカイは、雨宮に「自分と一緒に行こう。」と誘い、森に向かうのですが…。
少女漫画のようなタッチで小学生を自由に描いている
絵を見ると分かるように、少し少女漫画タッチの画風なのですが、初めてこうゆう絵の漫画でゾクゾクし感動しました。
この感動は言葉では表現しずらいのですが、「小学生編」では小学生の自由な部分…相手が傷ついてしまうから普通なら言ってはいけない言葉やイジメ等、その辺りがものすごくストレートに描かれています。
でも小学生なのでそこまで悪気があるわけじゃなかったり、イジメがあってもケロっとしてたり翌日には何もなかったようにお互い過ごしているあたりが結構爽やか。
お互いに好きに言い合ってケンカして上下関係が逆転したり…。ドロドロしていたりやり過ぎたりしていない分、色々な事件も微笑ましく見れたりします。画風もあるのかもしれないんですが、カイが置かれている色街での生活という状況も悲観的には描かれていません。「この街から出たくても出られない」という葛藤もあるのですが、カイの元気な性格が眩しく胸に突き刺さってきます。
お母さんも娼婦なのですが、世の中に絶望もしていませんし息子のカイを周りから必死で守ろうとします。お母さんもすごく明るくて、人の描き方もこの漫画は見事。
運命の人と出会う「ピアノの森」小学生編
これは後々読み進めるとストーリーが明らかになっていくのですが、カイ少年にしても雨宮少年にしても、この小学生の時に「運命の人」とも言える相手と出会う事になります。
何気なく日常が描かれる小学生編の中でも、実は大切な出会いがある…。これは大人になった今でも小学校の頃に出逢った人と仲良く付き合っている人も多いと思うのでカイの物語を疑似体験しているような気持ちにもなってくるでしょう。
ちなみに、カイはいわゆる「天才少年」なのですが、当初カイ本人は自分の才能や能力に全く気付いていません。森で夜な夜な「遊びで」弾いていたピアノを本気でやらないか?と言われても「遊びは遊び」と自分の能力を理解出来ずにいます(小学生に才能を理解しろというのもまた難しい話でしょうが)。
「ピアノの森」みたいに心に響く漫画はなかなかない
小学生編は7巻か8巻で終わりで、それからは高校生編に進むのですが、小学生編の「スレてるんだけどピュアな時代」のカイの物語はとても心に響きます。
後に恩師とも言える先生との出逢いやライバルとの出逢い、そして小学生編後半の「採点できないピアノ」を弾くカイの描き方なんかは鳥肌モノです。不覚にもウルウル来たのは読んだ事がある人の中で僕以外にもたくさんいるんじゃないでしょうか?
「自分だけのピアノを弾くだけだ」という信念の元にカイはピアノを弾き、それは聴衆の心を躍らせ鷲掴みにしていきます。
子供の頃を思い返しながら読んでも、子供がいる親として読んでも楽しめてなおかつ感動を呼ぶ漫画「ピアノの森」…。ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?
ちなみに、小学生編は2007年に声優として一ノ瀬 海役には上戸彩さん、雨宮 修平役には神木隆之介さんでアニメ映画にもなっています。
こちらはhuluで観る事が出来るようです。
hulu「ピアノの森」はこちらから
森で雨宮少年がカイに心を揺さぶられたように、心を揺さぶられる感動体験をしてみてください。