映画「残穢~住んではいけない部屋~」公開前に原作小説を読んでみました

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映画「残穢~住んではいけない部屋~」 商品レビュー

「この物語はフィクションです」­
と、小説にあるべき文章がどこにも書いていないドキュメンタリーホラー小説、­
それが「残穢(ざんえ))です。­

 

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2016年公開、映画「残穢」

 

2016年1月30日に公開される「残穢〜住んではいけない部屋〜」の原作小説というこ­とで読んでみたのですが、これがとても怖い。­
小説「リング」を初めて読んだのは確か高校1年生の頃。「読んだら1週間絶対に­不安になる本だから読んでみて」と言われて読んで、本当に1週間怖くてしょう­がなかった。(なぜ1週間なのかはお分かりですよね?)­
これと同じような「読んじゃったけど大丈夫なのか…?」というような不安に包­まれる小説と言えます。­

 

ビックリさせるホラーはホラーに非ず

 

ただし、このホラー小説にはリングや呪怨で出てくるような「呪い」という物は­語られません。­

山村貞子や佐伯伽椰子のような悪霊に襲われる事もありませんし、振り返ったら­幽霊がいて脅かされる…といった事もありません。­
いわゆる呪いのような物は呪いという名前ではなく「穢れ(けがれ)」という表現をされ­ています。­

怖い話マニアな僕ですが、「残穢」は異色の作品だと感じました。そう感じたのは主に以下の点です。­

 

・怖い話­自体は「ありがちな話」
・幽霊が急に出てきてこちらを脅かすことは無い­
・寺や神社は助けてくれない­
・実名作家や実在事件の紹介­
・最初から最後まで淡々と語られる口調­

 

残穢のストーリー

 

残穢のストーリーを少し見てみましょう。­

この家は、何か可怪(おか)しい­…
京都市に住む小説家の「私」は、かつて少女向けにホラー小説を書いていた。
そのあとがきで­新たな話を集めるために読者に「怖い話」を教えてくださいと呼び掛かけていたことがある。
2001年末、読者で「岡谷マンション」の204号室に住む30代女性である­久保さんから1通の手紙が届いた。手紙によると、久保さんが部屋でライターの仕事をし­ていると背後の開けっ放しの寝室から「畳を掃くような音」がする…という。­更に翌年、久保さんから改めてメールが届いた。相変わらず寝室から右に左­に畳を擦るような音が続くので、ある時意を決して振り返ってみると着物の帯のような平たい布­が目に入ったという。
その話を聞いて「私 」は「この話をどこかで聞いた事がある」と感じる。同じ頃転居のために荷物を整理していた「私」は、「屋嶋」という女性から­1999年7月に受け取った手紙を見つけ「どこかで聞いた事がある」という正体はこれだったと気付いた。
屋嶋さんも自宅マンションである401号室の寝室から時折聞こえる何かが床を掃­くような音に悩まされていたという。久保と屋嶋の住所は部屋こそ違うが同じマン­ションだったため、私は彼女らが遭遇している「何か」は、同じものなのではないだろう­かと考える。しかもそのマンションは、人が居つかない事で近所で有名だという。このマンションはいわゆる「事故物件」なのか?

 

映画『残穢【ざんえ】−住んではいけない部屋−』予告編

相談の手紙が来たのが204号室ですが、実は同じマンションの401号室からも過去に同じような怪異の相談が寄せられていたという事です。

同じマンションの別々の部屋から寄せられる怪異。これは一体なんなのか?

 

現実とフィクションの境界線

 

著者曰く「現実とフィクションの狭間」の物語だそうですが、細かいディテール(小説だから当然だけど)や、怪異は起こるが恐怖があまり起こらない物語、そして足かけ8年に及ぶ調査報告から、稲川淳二氏が「生き人形」で語った言葉を思い出します。稲川淳二氏は

 

怪談っていうと、怪談噺でいいわけでしょう?ただ、どっから「怪談」なのか…と­思うわけですよ。­
どっから怪談噺で、どっからが現実で。­(稲川淳二怪談ライブ「生き人形」より)

 

と語りました。
残穢はまさにそんな物語で、何気ない事象や言葉が「怪異」の入り口であったりするので境界線が非常に曖昧です。

 

縁を以て繋がっていく怪異

 

「畳を掃くような音」に悩む相談者がいて、音の正体が分かった。ね、怖いでしょ?では終わりません。
終わらずに淡々とした口調で怪異の存在に否定的なスタンスを取りつつ怪異の根幹を探っていくのですが、最後がとてもリアル。
(最後については、是非読んで確認してもらいたい)

 

残穢のレビュー感想ストーリー

 

世の中に溢れている「あまり怖くない話」。

単体では怖くない話かもしれませんが、その話が更なる怖い話のカケラだったら?
怖くない話と怖くない話を繋ぎ合わせる事で同じ怪異に行き当たるとしたら?

 

どこにも逃げ場のないような恐怖が気付かないだけで周りにはたくさんあるのかもしれません。

 

そして「怪談ファン」としては、その恐怖は正体不明であるべきだと考えています。
「なんだか分からない」という物が結局のところ一番怖いと思うからです。「何があったのか分からない」のも同じく怖い。
稲川淳二氏の怖い話でいえば「グアムの廃屋」が「何があったのか分からない」話に該当するでしょう。
オチなし、解決なしという話は本当に怖い。「分からない」ということは怖さを増長させる何ががあります。

 

あまり詳しく書くとネタバレになってしまうから書けませんが、これは小説というより超長編の怖い話です。

しかも、もしかすると…実話なのかもしれない。怖い話マニアには一度は読んで欲しい小説です。